虫の息

おれは陽気なカブトムシ

生まれてしまったこと

あと数日で30歳になる。

 

自分が想像していた30歳とは違う、30歳になってしまう。経済的・心身的に余裕のある人たちは30歳になると、年齢を重ねたことにショックを受けるのだろう。おれはそれよりも稚拙で余裕のないままこの歳を迎えてしまうことが怖い。

 

10代のころネトゲやVCでしゃべっていた30代の人たちはその会話の内容のほとんどが仕事についてだった。働き盛りというやつだと思う。未婚であるため生活にあまり興味が無いような人が多く、ちょうど仕事が軌道に乗ったり金銭的に余裕が出てくる時期でもあるし、将来のビジョンや自己啓発の話などは飽きるくらい聞かされた。

 

将来のビジョンについての話はかなり参考にさせてもらったが、今のところ想像通りには進んでいない。いつか家を持って好きな車に乗って…というのは、目標というよりは絵空事に近くなってきている。

 

そんな話を聞いたのも10年前のことであって、あれから何も成長を感じていない。フリーターを脱して正職に就いたのは前進だが、妻方の身内の紹介で入ったカスみたいな会社だった。

子供が2人いてもそれは生物的なものなので成長とは言えない。父親らしい振る舞いをしたところで自分自身の糧にはならない。子供を通して学ぶことはたくさんあるが、個人的な成長ではない。

 

毎年誕生日が近づくたびに苦しい、切ない、やるせないような気持ちが胸を充満する。生まれてしまった苦痛に耐えながら、この場に停滞し続けるのだろうか。