虫の息

おれは陽気なカブトムシ

スピリチュアルメンヘラクソババア

およそ12年ぶりに、母と会う。

 

最後に会ったのは20歳の頃で、そのときは単身で母の住むベトナムへ飛んだ。おれはよくタイとか東南アジア系のハーフと間違えられるが、父母ともに純粋な日本人である。

 

ベトナムに住むことになった理由の発端は破天荒の叔父(母の弟)であり、昔からアメリカの大学にいきなり入学したり、海外に飛びまくったり、仕事をコロコロ変えたり、プロのミュージシャン(横須賀サーベルタイガー)をやったりで、少し理解し難い行動をする人だった。

 

その叔父が突然「ベトナムはIT最後の楽園だ」と言い出し、ベトナムで起業することになったために母の家族はほぼ全員移住することとなった。

 

メンツは祖父母、叔父夫婦、従兄弟、母と再婚相手という、絶妙な顔揃えである。

この再婚相手はもともとチンピラの下っ端で、連れ子が3人いる。元妻とはどうなったのかおれは知らないが、母がスナックの経営をしていたときにそこの“シマ”を持っていた組の構成員だったらしい(めちゃくちゃ面白い)。

 

スナックで母と出会い、結婚を約束した直後にムショ入りし、ムショから出てすぐに籍を入れたという話だが、こんな任侠映画みたいな展開が身近に起きていること自体がおれとしてはかなり面白かった。

 

もはや説明する必要もないと思うが、うちの両親は20年以上前に離婚している。おれが父方で、姉が母方だった。母は離婚当初うつ病がひどく、いろんな男をとっかえひっかえしながら市営マンションに姉と住み、そんな母と暮らしたくなかった姉は、17歳からキャバ嬢をして男の家を転々としていた。母が再婚相手と出会ったのはこの生活から脱却して間もない頃だったという。

 

今回、母は姉宅へ遊びに来る。コロナで3年ほど飛行機が飛ばなかったので、久々の来日である。最初で最後になるかもしれないので、おれの家族も初めて顔を合わせることになった。

そして長男次男はろくに姉家族と会ったことがなく、嫁も母と初めての対面となるので、知らない者同士総勢10名が一度に会うことになる。もうオフ会だろこれ。

 

親父にはこのブログで散々触れてきたが、母に関することはほとんど触れていない。母の概要についてすごく砕けた言い方をすると、スピリチュアルメンヘラクソババア。

呪いとか想いとかを信じているタイプで、カラオケでは椎名林檎ばかりを歌う。顔はパーツパーツがおれに似ていて、笑い方までそっくりである。口が悪く、簡単に毒を吐くのも同じ。

 

そんな母と姉家族と昆虫一家が激突したら、一体どんな化学反応が起こってしまうのだろうか。いろいろな不安はあるが、楽しみがたくさん詰まった神奈川帰省にしたいと思う。