虫の息

おれは陽気なカブトムシ

草や木

どう見てもADHDの職員が、11年働いて辞めた。もう1人適応障害の職員が、10年働いて辞めた。

 

普通の会社で働きたい人、このままじゃダメだと見限る人、おれがこの会社で働き始めてから長年働いている職員が次々と辞めていった。

 

自分自身、昇給もなく残業代も出ない薄給の会社にいつまでいるのだろうかと考えることがある。補助金等が上がれば親族に分配してしまう身内会社にいたところで何も得られないと思う。

 

何度も転職を考えたがそもそも人前できちんと話すことができず、いつも赤面して黙ってしまうので学生で就活していた時期はどんどん面接が怖くなっていった。

 

今でも面接が怖い。何もできない人間なのに何をアピールすればよいのかわからない。自己PRと自己紹介に差が生まれない。積んだ経験を活かして云々の文句は、何も経験を積んでいないので言うことがない。

 

決定的な自己肯定感の無さがおれを動かそうとしない。昔は「面接に行ってくる」と言ってスーツのまま東京を散策したり、公園でタバコを吸って時間を潰していることがあった。

 

このまえ司会をやってくれと頼まれたときにはすべてのタイミングがずれてしまい、全身に脂汗を流しながらなんとか終えた。あぁ、何もできない人間なんだなと改めて思った。

何をしても少しのミスがあり、自分で考えてやれと言われると大体1からやり直しになる。指示をくれればその通りに動くのに。

 

職場の教育制度は皆無に等しく、1人で考えることができる人間だけがふるいにかけられて生き残っているような環境である。指示を仰ごうとしても「考えて動け」と言われる。自分の子供にもそうやって教育しているのだろうか。

 

”やりがい””目標”なんてものはない。今までは本当にただ生きていられればいいと思っていた。しかし結婚して子供が生まれ、家庭のことを思うようになった。学費は?趣味は?遊びは?生活は?余裕がないなら家庭なんか持つなという人がいるが、余裕を持つことができる内容の会社が減ってきているからおれと同じような境遇の若年層が増えてきている。

 

身内から紹介されて入った会社なのに「給料が低い」「仕事を変えろ」と言われたことがある。紹介されたときは「大きい会社だから長く働けるよ」「給料も高いよ」と言ってきたのに。

 

輪廻転生が存在するならば、来世は草、木、花など、おおよそ理性や社会性の存在しない生き物になりたい。